お墓参りなどでお墓に行った際に、周りを見渡すと様々な種類のお墓があることに気付きます。お墓によっては家紋が彫られているお墓があります。家紋といえば、お墓以外にもきちんとした場所で着る正装にその柄が入っている「紋付」を見かけたりしますよね。これにはいったいどんな役割があるのでしょうか。今回はお墓に彫られる家紋とその理由について解説します。
そもそも家紋とはいったい何?
家紋とは、平安時代に始まった文化だと言われます。目印のように使用されていた家紋ですが、だんだん貴族たちの中で、自分たちの権威を誇るものに変化していったそうです。
武家社会になったころには家紋は定着して、武器や旗に仲間、敵の目印として入れられ、この家族の身分を見分けるものとして使われていました。その後は平和な時代でも家紋は流行して、その流れで今もお墓に彫られているのです。簡単に言えば、家族のシンボルマークとも言えるでしょう。大昔にご先祖様が大事にした家紋がここまで受け継がれていると考えると、とてもロマンがありますよね。ですので、いまのお墓に家紋を入れるのは絶対的なルールがあってのことなのかと聞かれたら、決してそうではありません。
お墓に彫られる家紋の色と種類は?
お墓に彫られている家紋には実は様々な色があることにお気づきでしょうか。なかでも一般的なのは「黒」です。黒の家紋はお墓の石からもシックに浮かび上がります。「白」の家紋もあります。墓石の色が暗い場合、白の家紋はかなり映えます。そして「金色」の家紋です。こちらは一目見ても華やかであり、上品さも兼ね備えています。暗い色の墓石でも、比較的明るめな墓石にもどちらにも映える色です。お墓に彫られる家紋の色はこの3色が最もポピュラーであると言えます。ですが、家紋の色にも特別な決まりはないので、お墓に合った色を選択して良いのです。
また家紋の種類には、様々なタイプがあります。カテゴリーに分けると、「植物紋」と呼ばれる花や草木をデザインに入れたものや、古くから描かれているような文様をつかった「文様紋」、鳥獣や生き物が描いてある「動物紋」、文字をそのまま家紋に入れている「文字紋」、山や波、気象現象などを絵に描いた「自然紋」、工具や武器を入れた「器材紋」などがあります。昔の人はとてもフランクに自分たち家族の印として家紋を使っていたのです。その為生まれた土地ならではのものだったり、家業にまつわるものがデザインに多く含まれています。
なぜ、現代のお墓にも家紋が彫られているのか
平安時代に始まり武家社会で流行し、長い間使われて一般的になった家紋ですが、今の日常生活で常用している人は少ないでしょう。しかし、お墓には家紋の文化が未だに残っているのです。この理由は、お墓に家紋を彫る意味に、「子孫繁栄」が挙げられるからです。大昔から受け継がれてきた家紋をお墓に彫ることは、これからもこの家紋と共に自分たちの家族を途切れさせないように、子どもたち家族を増やしていこうという意味を持っているのです。先祖代々受け継がれてきた家族の象徴的なマークをこれからも途絶えさせず、繁栄させていきたいという一種の祈りのようなものと言えるでしょう。
今も昔も少々堅苦しい印象をもってしまうお墓ですが、家紋だけでなく故人の好きだった漢字を一文字を彫ったり、絵が彫ってあるお墓などユニークなものも含め種類が様々あり、実はかなり自由度も高いのです。ご先祖様との繋がりや歴史を感じるのにも家紋は良いものですよね。お墓で見かけるのをきっかけに、自分たちの家族の家紋がどこから現れたのか、調べてみても良いかもしれません。